抜歯後の痛み(特にドライソケット)の期間や対処法
2019/12/22公開歯を抜いた(抜歯)の後には痛みが出ることがあります。
「抜歯後の痛みはいつまで続くのか?」
「数日して痛みが酷くなってきた場合は?」
「痛みが出ないよう何かできることはあるのか?」
このコラムでは、その辺りを解説したいと思います。
抜歯後の痛みはいつまで続くのか
抜歯後の痛みには大きく2つのパターンがあります。
正常に治っていっている場合の痛みと、そうでない場合の痛みです。 ここではまず正常に治っている場合の痛みについてご説明します。
1. 麻酔が切れるまでの時間
まずは手術中にかけていた麻酔が切れると、傷口の痛みが出ることがあります。
痛みが出てくるまでの時間ですが、麻酔が切れるまでの時間は個人差が非常に大きいです。
一般的には、麻酔が切れ始めるのは平均して1時間半ぐらいと考えてください。 完全に感覚が戻るまでには3~4時間かかることが多く、早い人は1時間、遅い人は6時間ぐらいかかることもあります。
また、麻酔を使った量や部位によっても違いがあります。 これについては患者さんによってケースバイケースなので、手術前に予測できる範囲ではお伝えしています。
さらに、麻酔が切れた後の痛みについても個人差があります。 人によっては全く痛みが出ないこともありますが、やはりできたばかりの傷口があるので、どうしても多少の痛みが出てしまうことが多いです。
麻酔が切れる前に痛み止めを飲んでいただくと、この痛みは抑えることができます。 多くの場合は痛みがほとんどないか、我慢できる程度の痛みでおさまります。
当院でも手術の後に痛み止めを飲んでいただくようにしています。
2. 抜歯後の痛みの期間
多くの場合、1~2日で痛み止めが不要なくらいまで痛みが引きます。
しかし、抜歯した傷口が細菌感染を起こしたり腫れがある場合には、痛みがなくなるまで1週間程度(長い場合は2週間)かかります。 抜歯する時に歯ぐきを切開したり、骨を削った場合(骨に埋まっている親知らずの抜歯など)には腫れが出やすく、特に下の歯の親知らずを抜歯した際にはその傾向が強いです。
また、後でお話しする「ドライソケット」という状態になると、2週間~1カ月ほど痛みが続く場合もあります。
抜歯後の痛みのピークはいつ?
特に問題がなければ、痛みのピークは麻酔が切れたすぐ後ぐらい(抜歯後数時間くらい)です。 あとは徐々に痛みは引いていきます。
細菌感染や腫れがあった場合は、抜歯直後よりも1~2日後が痛みのピークとなり、少し遅れて3~4日後が腫れのピークとなります。
当院では、手術後の細菌感染や腫れの予防のため、抗生剤(化膿止め)の薬を3日分、痛み止めの薬を通常3日分(腫れなさそうなケースでは数を減らします)出すようにしています。
抜歯後数日は歯ブラシを傷口にあまり当てられず汚れがたまりやすいので、消毒用のうがい薬を処方する事もあります。
抜歯後数日で痛みが増してきた場合
抗生剤やうがい薬で傷口の感染を防いでいると、ほとんどの方は傷口が正常に治っていきます。 ですが希に、抜歯後数日経ってから逆に痛みが強くなってくる場合があります。
これは「ドライソケット」と呼ばれる状態です。
ドライソケットとは
ドライソケットとは、抜歯した穴の骨が露出したままになり、骨に細菌感染が起きている状態です。 ドライソケットになると、抜歯後、数日(3~5日後)から強い痛みが出てきます。
通常、抜歯後は歯を抜いた穴に血液が溜まってモチ状に固まり(血餅といいます)、そこに血管や細胞が新しくでき、傷口が治っていきます。
しかし、うまく血餅ができなかったり、数日たってから血餅が剥がれてしまうことがあります。 この場合、露出した骨の表面が感染を起こし、ドライソケットになります。
ドライソケットの痛みはいつまで続く?
ドライソケットになると、強い痛みが10日~2週間ほど続きます。 その後、1~2週間かけて徐々に痛みが引いてきます。
つまり、痛みが完全におさまるまで、長ければ1カ月ほどかかるということになります。
ドライソケットはなぜ起こる?
上でお話した通り、ドライソケットは抜歯した穴の中に血の塊ができない(もしくは剥がれる)ことで正しい治癒が起きずに発症します。
その原因としては、次のようなものがあります。
- 骨自体の血流が悪くなっていて、抜歯した穴に血が溜まらなかった
- うがいをし過ぎて、血の塊が剥がれてしまった
- 免疫力が落ちていて、骨の表面が感染を起こしてしまった
骨の血流や免疫力は全身の状態のお話ですが、うがいのし過ぎは抜歯後でも自分で気を付けることができます。
喫煙も血流を悪化させるため、ドライソケットの原因になります。 喫煙している方は、傷口が落ち着くまでの数日間はタバコを控えた方がよいと思います。
ドライソケットはどんな痛み?
ドライソケットになると、特に何もしなくても常に痛みがある状態になります(自発痛と言います)。
心臓の拍動に合わせた、脈打つような痛みが出ることもあります。 ズキンズキンするような痛みです。
かなり強い痛みが出ることも多いので、おさまるまでは痛みを和らげる治療が必要になります。
ドライソケットにならないためにできること
ドライソケットにならないためにとにかく注意してほしいことは…
抜歯当日に頻繁なうがいをしないこと!
強い圧をかけるようなうがいをしないこと!
抜歯した日にはどうしてもにじむ程度の出血があります。 実は出血量自体は少ないのですが、患者さんが目にする時には唾液と混った状態なので、唾液+血液の量を出血量と勘違いされて、すごい量の出血があるように見えます。
しかし実際は、血管が破れたり全身疾患の影響で血が止まらないなど、よほどの事がない限りは出血量はわずかです。 見た目ほど心配しなくても大丈夫です。
出血を気にして不安になってうがいを繰り返してしまうと、血餅がはがれてしまい、ドライソケットになりやすくなります。
どうしても気持ち悪い時は、水を(クチュクチュせず)飲むとか、水を軽く口に含んでそのまま吐き出すといった方法をとって、とにかく抜歯したところに水圧をかけないように気を付けてみてください。
ドライソケットになった場合の対処法
ドライソケットになった場合は、お時間が取れるなら週2~3回ほど来ていただきたいです。
医院に来ていただくと傷口を洗浄した後、
- 表面麻酔
- 炎症止め
- 化膿止め
の3種類の軟膏の薬を混ぜて抜歯した穴の中に入れる処置ができます。 これにより、痛みを抑えるともに、内部を殺菌して感染の治癒を早めます。
さらに、必要に応じて飲み薬(痛み止めと化膿止め)を追加で処方します。
どうしても治りが悪い場合
どうしても治りが悪い場合には、傷口の再掻爬(さいそうは)という処置を行うことがあります。
再掻爬は、麻酔をして、表面の感染した部分を掻き出して再度出血させ、血餅を溜めて治癒を促します。
しかし、ほとんどの場合は自然に治癒するので、再掻爬を行う事は滅多にありません。
自宅でできること
ドライソケットになった場合に自宅でできることとしては、次のようなものがあります。
- 痛み止めや化膿止めを飲む
- 抜歯した傷口をなるべく触らない
- 抜歯したところに食べかすが入らないよう注意する
うがいをしすぎると再度血餅ができるのを邪魔してしまうので、最小限にした方が良いでしょう。
今回のまとめ
抜歯後の痛みの期間をまとめると、
- 手術後数時間で痛みが出てきます。
- 痛みは1~2日でおさまることが多いです。
- 細菌感染や腫れがある場合には1~2週間かかります。
- ドライソケットになると1カ月続く場合もあります。
とにかく、痛みが続くと不安でしょうし、日常生活に色々と支障が出てくると思います。 気になる事があれば、お気軽にご質問下さい。
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