保険適用でも白い歯にできるのをご存知ですか?
2020/1/18公開 (2024/8/8更新)
保険治療を希望して銀歯を入れたけど、「思ったより目立って気になる!」
そんな経験はありませんか?
保険制度では、ある程度以上進んだ虫歯は、金属で修復するよう決められています。 しかしここ数年で、保険でできる白い被せ物が一部認められ、保険でも白い歯を入れられるケースが増えてきています。
また、白い詰め物も改良が進み、金属を入れなくてもいい症例が増えています。
現在の保険制度でどこまで白い歯にできるのか?
保険の白い歯にデメリットはあるのか?
このコラムでは、その辺りを解説したいと思います。
本当に保険で白い歯にできるのか?
2024年6月の保険改定により、一定の条件を満たせば、奥歯を含め全ての歯が保険適用になりました。
その条件については次の項目で解説しますが、簡単に言うと以下の通りです。
- 前歯・小臼歯(前から5番目の歯まで)は全て適用可能
- 大臼歯(前から6、7番目の歯)は、左右の奥歯の咬み合わせがほとんど残っている場合、もしくは向かい合う合う相手の歯を失っているために咬合力があまりかからない場合に適用可能
ただし、ブリッジの支えになる奥歯については、銀歯しか選べないこともあります。
また、保険の白い歯は銀歯と比べて強度などが劣り、外れやすく、歯を削る量も増えるため、適用できるかどうかは実際のお口の中の状態を見て判断しています。そのため、患者さんのご希望に添えない場合もあります。
保険の白い歯の種類と特徴
以下は、保険でできる白い被せものの種類について解説します。
硬質レジン前装冠
金属の被せ物の表面にプラスチックの白い材料を盛り付け、金属が見えないようにした被せ物です。
適用範囲は以下の通りです。
- 前歯(前から3番目の歯まで)
- ブリッジの場合、小臼歯(前から5番目の歯)まで
プラスチックは強度が劣るため、白い材料で覆えるのは、唇・頬に接する面だけです。 上の歯では金属はあまり見えませんが、下の歯は咬み合わせの面(上から見た面)は金属が露出します。
CAD/CAM冠
何やら難しい名前ですが、コンピュータを利用して作る被せ物のことで、CAD/CAM冠(きゃどきゃむかん)と呼びます。
- CAD=コンピュータを用いて設計
- CAM=コンピュータを用いて製造
素材は、セラミックとプラスチックを混ぜ合わせた「ハイブリッドセラミック」というものが使われています。 2014年4月から保険適用になりました。
単独歯の被せ物のみが適応で、歯を連結固定したりブリッジにする場合は適用できません。
部位は、前歯、小臼歯(前から5番目の歯まで)ならすべて適用可能です。 大臼歯は少しややこしい適用条件があります。 後で詳しく説明します。
CAD/CAM冠のデメリット
CAD/CAM冠は金属を使わないので見た目が良いのが特徴です。
しかし、以下のようなデメリットがあります。
-
強度が劣る
長年使っていると、噛む力が強い方や歯ぎしりがある方はすり減ってしまいます。
-
歯を削る量が増える
強度が劣るため、被せ物の厚みが薄いと割れたり外れたりします。そのため、歯を多く削る必要があり、神経にダメージを与えてしまう可能性があります。 特に前歯では、神経がある歯に適用すること自体が難しいです。
-
外れやすい
材質の特性上、銀歯よりも外れやすいです(問題なく装着したケースの約20%が外れることが分かっています)。 特に、入れ歯の留め具をかける歯には推奨されません。
また、前歯については、歯の長さが短い場合や、上下の歯の位置関係が悪い場合には適用できないケースも多いです。
-
連結できない
歯周病で揺れているなど、歯の土台に不安がある場合は、隣の歯と連結した被せ物にすることで補強することができます。 しかし、CAD/CAM冠は強度の問題から連結ができません。 当然、ブリッジもCAD/CAM冠ではできません。
-
劣化する
プラスチックが混ざった材料なので、長期的に劣化して、色がくすんだり、摩耗したり、汚れが付きやすくなったりします。
以上のようなデメリットがあるため、安易に適用してしまうと、早期に外れたり割れたり、痛みが出て神経を取ることになったりするリスクがあります。
そのため次のような患者さんには、適用できるかどうかを慎重に判断したうえで、ご相談させていただいています。
- 歯ぎしりのある方や、硬いものを好んで食べる方
- すでに歯がかなりすり減ってしまっている方
- 咬み合わせや歯ならびに問題がある方
- 神経が残っている歯
前歯(前から3番目の歯まで)へのCAD/CAM冠の適用
2020年9月に保険適用となり、単独歯ならすべて適用可能となっています。
ただし、外れやすかったり、神経がある歯は痛みが出たりするリスクが非常に高いため、よほど条件が揃わない限りは前述の硬質レジン前装冠、もしくは自費のセラミックをお勧めしているのが現状です。
小臼歯(前から4、5番目の歯)へのCAD/CAM冠の適用
2014年4月から保険適用開始となり、単独歯ならすべて適用可能です。
特に、神経がない歯では、適用できるケースが多いです。 神経がある歯や歯ぎしりのある方などは、リスクをご説明したうえで判断しています。
大臼歯(前から6、7番目の歯)へのCAD/CAM冠の適用
2017年12月からは、条件付きで下顎の第一大臼歯(前から6番目の歯)、2020年4月からは上顎の第一大臼歯も保険適用になりました。
2024年6月の改定で適用条件が大きく変わりました。
金属アレルギーの診断と、医科からの依頼状がある場合は例外的に全ての歯に適用可能です。
大臼歯は咬合力が強くかかるため、実際に割れる・外れるといったトラブルも多いです。 咬み合わせの要となる重要な歯でもあります。 適用条件の表を満たしている場合でも、実際のお口の中を診査したうえで適応症かどうかを判断します。
PEEK冠
2023年12月から保険適用になった、全く新しいプラスチックの被せ物です。
PEEKとは「ポリエーテルエーテルケトン」の略で、薄くても割れにくく、しなやかな材質です。 親知らずを含む全ての大臼歯に適用になっています。
ただし、色調に全く透明感が無く、石膏のような白さなので、目立つ部位には適用しづらいです(銀歯以上に目立ちます)。 噛む力でたわむので外れやすいことも指摘されており、専用の接着セメントが必要なこともあり、当院では導入していないのが現状です。
以上のように、保険の白い歯はどれもデメリットがあり、適用を慎重に選ぶ必要があります。
保険の白い歯の費用について
以下は3割負担での負担額です。
神経のない歯 | 神経のある歯 | |
---|---|---|
硬質レジン前装冠 前歯 | 8,760円 | 9,380円 |
CAD/CAM冠 前歯 | 7,850円 | 8,470円 |
CAD/CAM冠 小臼歯 | 6,860円 | 7,480円 |
CAD/CAM冠 大臼歯 | 7,320円 | 7,940円 |
PEEK冠 大臼歯 | 8,220円 | 8,840円 |
型取りなどを含めた料金です。(2024年6月改訂)
これらに再診料、歯科疾患管理料などが加わります。
コア(被せ物のための土台)が必要な場合はさらに500~1,000円程度加算されます。 治療全体で、大体10,000円をちょっと超えるぐらいと考えてください。 (型取りと装着、2回受診の合計負担額)
歯のクリーニング等をした場合にはその料金も別途かかります。
今銀歯が入っているのですが保険の白い歯に交換できますか?
歯の状態によっては交換が可能です。
保険治療はあくまで治療目的で行うものなので、その歯に虫歯や感染がある場合にのみ、保険で交換することができます。 (保険外であれば自由に交換可能です)
ただ、実際は銀歯の内側や境目に虫歯ができていたり、根っこの中が感染していたりするケースが結構多いです。 気になる場合は一度こちらで歯の状態をチェックしてみますので、お気軽にご相談ください。
ブリッジも保険で白くできますか?
2018年4月から、「高強度硬質レジンブリッジ」が保険適用になりました。 白いプラスチックのブリッジで、内部にグラスファイバーの補強が入っています。
ただ、条件が厳しく、適用範囲は狭いです。
高強度硬質レジンブリッジの保険適用条件
- 第二小臼歯(前から5番目の歯)の欠損で、その前後の歯の支えがしっかりしていること
- 原則として、前後の歯(支えになる歯)の神経は取ってあること
- 第二大臼歯(7番目の歯)が上下左右4本揃っていてしっかり噛み合っていること
- 噛む力が強すぎない、歯ぎしりなどが無いこと
金属アレルギーの診断があれば、第二小臼歯以外の欠損でも適用になります。
正直なところ、あまり普及していないのが現状です。
理由としては、次のようなものがあります。
- 適応症が非常に限られている
- プラスチックなので強度に不安がある
- 強度を保つために歯を沢山削らなくてはいけない
- 作れる技工所が限られている
実を言うと、私もこれを作ったことがありません。
何せプラスチックのブリッジですから、割れるリスクが高いですし、割れなかったとしてもずっと使っていると摩耗して噛み合わせが変わってしまう可能性もあります。 現状としては、金属アレルギーがある方に止むを得ず適用するブリッジ、という位置付けで考えている歯科医師が多いと思います。
ちなみに費用は、型取りと装着の2回で、3割負担の場合20,700円(プラス再診料、歯科疾患管理料など)となります。
保険の白い歯にデメリットはある?
硬質レジン前装冠のデメリット
硬質レジン前装冠は金属の裏打ちで補強されているため、付け根の部分(歯と歯ぐきの境目)が黒ずんで見えることがあります。 加齢とともに歯ぐきが下がると、より顕著に目立ってきます。
また、金属を隠すために、光を通さない真っ白なプラスチックの層を引くので、歯の自然な透明感が出ないのが難点です。
さらに、プラスチック系の素材なので、長く使っていると劣化して色がくすんできたり、強度が低いので摩耗したり欠けたりすることがあります。
CAD/CAM冠のデメリット
CAD/CAM冠は金属を使わないので、硬質レジン前装冠のように付け根の黒ずみはありません。 見た目の自然感はセラミックには劣りますが、多少の透明感はあり、そんなに気にならない程度と思います。
ただし、やはりプラスチック系の素材なので、次のようなデメリットがあります。
- すり減って咬み合わせが甘くなる事がある
- 長く使っていると多少劣化して色がくすむ
- 他の被せ物と比べて外れやすい
- セラミックや金属と比べて汚れが付きやすい
特に、第一大臼歯(6番目の歯)に関しては、咬み合わせの要になる重要な歯ですから、CAD/CAM冠にする場合は注意が必要です。 本当にプラスチックの被せ物で良いのか十分検討した上でご提示させていただいています。
保険がきく白い歯のデメリットを解説してきましたが、これらのデメリットを全て解決できるのが保険外のセラミックです。
セラミックなら保険の制約がありませんから、すべての歯に対して適用する事ができます。 強度重視のセラミック、より美しさを追求するセラミックなど種類がありますので、そのケースに最適なものをご提示させていただきます。
セラミックの歯については次のコラムを読んでみてください。
銀歯とセラミック、前歯や奥歯など部位ごとのおすすめをご紹介
セラミックは保険になる?
残念ながら純粋なセラミックは全て保険適用外になります。
ここまででお話ししてきたように、白い素材でもハイブリッドセラミックや高強度レジンは保険適用が拡大してきていますが、これらはレジン系(プラスチック系)の材質であり、純粋なセラミックではありません。
歯科用セラミックには大きく分けて3種類(ポーセレン系、二ケイ酸リチウム系、ジルコニア系)があります。
それぞれの特徴で使い分けるのですが、共通して以下のような特徴があります。
- 歯に性質が近く、破折、摩耗、接着性などあらゆる点で耐久性が高い
- プラークや着色が付きにくく、虫歯や歯周病に強い
- 自然感が高く美しい
- 半永久的に変色・劣化しない
つまり、装着直後はもちろん、治療後年月が経つほどセラミックのメリットが出てきます。
当院のコンセプトの一つである「本当に長持ちする治療」という点では、保険外セラミックが圧倒的に有利です。
とはいえ、保険内の材料も決して悪いものではないので、十分なカウンセリングのもと、患者さんのニーズに最も合った治療をご提供できるよう、じっくりとお話させていただこうと思います。
保険の詰め物について
ここまでの記事は、被せ物についての解説でした。 神経が残っている歯の多くは、虫歯の範囲がよほど広くない限り、部分的な詰め物で治療可能なことが多いです。
その場合は、被せ物とは扱いが変わり、次のような特徴があります。
白い詰め物の種類
CR(コンポジットレジン)
虫歯を取り除いた所に直接詰める白いプラスチックです。
虫歯が比較的小さい場合に使用します。 型取りが必要なく、その日のうちに治療が終わります。 保険の虫歯治療として、昔から最も頻度の高い治療方法ですが、材料の質は年々進化していて、当院でも欠かせない治療法です。
歯を削る量が最小限で済むので、範囲が小さい場合はおすすめです。 また、神経が残っている前歯の虫歯では、ほとんどの場合CRをしています。 CRの方がメリットがあるとこちらで判断した場合は、銀歯やセラミック等は勧めず、CRを選択しています。
CAD/CAMインレー
2022年4月に保険適用になった、CAD/CAMの詰め物です。
色もきれいに馴染みやすいので、銀歯の詰め物に替わるものとして注目されています。 ただし、次の項目でお伝えするように、デメリットがあります。
保険治療の注意点
CRの注意点
CRの注意点として次のようなものがあります。
-
物性が劣る
銀歯、セラミック、CAD/CAMと比べて、強度が劣るので、欠けたりすり減ったりします。 また、やや汚れが付きやすく、年単位で徐々に劣化します。 -
形態の回復に限界がある
お口の中で直接詰め物の操作をするので、型取りをする他の治療と比べ、厳密に形態を作ることが難しいです。 歯と歯の間に行った場合に、食物が詰まりやすくなったり、フロス(糸ようじ)が引っかかったりする場合があります。
これらの問題を解決できる自費診療としてダイレクトボンディングというものがあります。 簡単に言うと保険適応外のCRです。
保険のCRよりも物性が良いため、欠けにくく、汚れの付着や劣化も保険よりは少ないです。 色調を重ねて充填するため、歯の自然な色調や透明感を再現しやすく、前歯も綺麗に仕上げることが出来ます。
また、奥歯の歯と歯の間の場合は、特殊な器具を使用することにより、物が詰まったりフロスが引っかかったりしない滑らかな仕上がりが得られます。
CAD/CAMインレーの注意点
CAD/CAMインレーは上に書いたCAD/CAM冠と同じデメリットがあります。
- すり減って咬み合わせが甘くなる事がある
- 長く使っていると多少劣化して色がくすむ
- 他の被せ物と比べて外れやすい
- セラミックや金属と比べて汚れが付きやすい
特に問題なのは、他のインレーよりも深く削る必要があることと、接着するセメントに保険の制約があることです。
インレーは通常、神経のある歯に用いるため、深く削ると痛みが出たり、神経がダメージを受けるリスクが上がります。 また、自費用のセメントよりも接着力と耐久性が劣るため、削った面の封鎖が不十分になり痛みや虫歯の再発リスクが上がったり、歯の薄く残った部分が後から欠けてくる場合もあります。
実際私も多数の症例を行ってきましたが、適応症は十分慎重に選ぶ必要性を感じています。
これらのデメリットのない代わりの治療法には次のようなものがあります。
-
金属のインレー(保険)
従来からある治療法で、見た目は金属ですが、歯を削る量がCAD/CAM冠よりも少なくて済むので、現在もよく行っています。 -
セラミックインレー
CAD/CAMインレーよりも割れにくいため歯を削る量も少なくて済み、劣化や汚れの付着も殆どなく、見た目もより自然で綺麗です。 -
ハイブリッドセラミックインレー
材質はCAD/CAMと似ていますが、技工士さんが手作業で作るため適合が良く、接着セメントも耐久性の高いものを使用できます。そのため、割れたり外れたり、痛みが出るといったトラブルも少ないです。 見た目も美しく仕上げることが出来ます。
費用
保険:CR | 740~1,020円 |
---|---|
保険:CAD/CAMインレー | 4,120~4,580円 |
保険:金属インレー | 2,800~3,500円 |
ダイレクトボンディング | 11,000~33,000円 |
ダイレクトボンディング (奥歯の歯と歯の間の比較的小さな虫歯の場合) |
16,500円 |
ハイブリッドセラミックインレー | 27,500円 |
セラミックインレー (e-maxまたはジルコニア) |
49,500円 |
お電話の前にご確認ください
おかげさまで多数のご予約・お問い合わせをいただき、大変ありがとうございます。
東京の方からご予約のお電話をいただくことが多いのですが、当院は福岡県の「六本松」にある歯科医院です。
おそらく東京都港区の「六本木」と勘違いされたのではないかと思います。
東京から来ていただけるならとても嬉しいですが、患者さんに移動時間・交通費など多大な負担をかけてしまいます。 お近くで歯医者さんを探してみてください。